私の周りのひとたち9 ~  たかべしげこさん

たかべしげこさん
たかべしげこさんは、紀伊国屋賞を受けたこともある女優さんです。オペラの演出もたくさん手がけ、私は、オペラデビューのヘンゼルとグレーテルでお世話になって以来、とても大切な友人です(なんていったら失礼かなあ)。
大きな光る目と、強い存在感、大人の女性の色気。聞くものの首や胸にまとわりつくような低くて甘い声が発するのは、はっきりした鋭い言葉。
「あたしねえ、一つ経験してなくて残念なのは、レズビアンの世界。経験してみたら、もう一つ違い世界が開けていたかしら。女優として」
一言一言ゆっくりと、そう話すたかべさんに、同感しながら、一度試してみましょうか、と言う言葉を飲み込む私。ルルを演じて以来、自分の中で不消化だった、レズビアンの相手ゲシュビッツへの感情を理解したいという思いと、友人としてのたかべさんを大切にしたいという思いの一瞬の戦い。それに、初めて試すときには、きっと、どちらかに経験がないと無理よね。
「男性相手の恋愛とは又少し違うのかなあ。」
「うーん、バージニアウルフがね……」
思い入れのある役について話し始める彼女の目は潤み、声はかすれ始めます。


何かで迷うと、私は彼女に電話をします。夕鶴のとき、ある場所での音の飛び方と、自分の心情があわなくて、どうしても音が体になじまず、会う人ごとに「どうしてこうなのだろう?」と問い続けたことがあります。そのとき、大きなヒントをくれたのが彼女でした。
「まあ、あんた、つうは、つるだからね。人間の女の感情とは違うのかもしれないわよ。」
そういわれてはたと納得し、その瞬間にその音が入ってきました。(ただ、今度は鶴の気持ちが分からなくて、一ヶ月ほど、鳥ばかり見ながらすごしました。今でも友人たちにそのころの事を言われると赤面します。練習の疲れを取ろうと温泉に行って、広い水面を見たとたんに、「つうなら、どうやって水浴びをしたんだろう」と、腕を広げて水浴びを始めて周りをあたふたさせたり、鳥かごの前に陣取って、鳥の鳴き声と動きを真似る私を不審がるひとに「役作りをしているんです」と説明して回る羽目に陥らせたりしたようです。)

たかべさんと私、役者魂が共鳴しているのではないかしら、と、思います。そう思っているのは私だけかな。彼女を前にするとなんだか恥ずかしくなって、それもいえなくなってしまうのです。

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この記事へのコメント

2019年05月18日 10:25
高部茂子さんの朗読会に参加しました。素敵な声のお方ですね。検索して居て 此処に来ました。同じウエブリブログなので 驚きました。どうか、よろしく。お暇がございましたから 私のブログにもぜひ。普通の主婦婆さんです。たかべさんと近いです。違うのは 私は 何の才能も開花しなかったことです。

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